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被嚢性腹膜硬化症

被嚢性腹膜硬化症とは、もとは人医学で命名された病態ですが、腹腔内を覆っている腹膜が腸、卵巣子宮、膀胱などを包み込んで癒着してしまう病態のことです。
当院でも、ここ数年で犬猫含め10頭ほどの症例に遭遇しております。
最も遭遇するのは、避妊手術の際に偶発的に発見するパターンです。
勿論、症状を示していない状況で、開腹して発見されるので、オーナー様も寝耳に水といった状況での事後報告となります。

開腹すると、ご覧のように小腸が膜性癒着しております。
適切な例えかどうかわかりませんが、「蜘蛛の巣に引っかかったものを丁寧にはがす感じ」です。

このように電気デバイスで慎重かつ丁寧に剝がしていきます。
小腸・大腸・卵巣子宮・膀胱が概ねくっつき合っています。
この状況では腹腔鏡手術は余計時間がかかり不向きとなります。

次は、症状有り、1歳猫の嘔吐症例です。
習慣的に吐く、食欲も徐々に無くなったとのことで当院で検査したところ、機能性イレウスにしてはおかしいため、開腹下にて精査しました。十二指腸、空回腸で膜性癒着しておりました。

このように十二指腸がS字クランク的に走行しており、漿膜面に腹膜が膜性癒着しております。

小腸も同様でした。
このこは手術後に、症状は消失しました。
これらの原因はまだ分からずですが、ここ数年増加しております。
徐々に当院も経験を積んで、概ねの対処法が分かってきたように思います。


内視鏡の本

今回、新たに内視鏡の本を購入しました。
著者は九州の名医である高橋ペットクリニック院長の高橋雅弘先生です。

私も若造の新人時代に臨床のノウハウを叩き込まれましたし、ここからスタートしたくらい原点となったところです。
内容も分かりやすく、情報も充実しており、また内視鏡学を深めていきたいと思います。
地域のペット達のために、Fight !!


猫の犬歯破折

室内飼育の若齢猫ちゃんが、2階の手すりから落下し上顎犬歯を破損したため、歯科治療で当院に来られました。
麻酔下で患部の状況を精査します。
御覧の通り、両側犬歯が途中で折れております。

左側は縦方向にも亀裂が入っております。このように薪割りのように縦に破折した場合、歯髄の状況によっては全抜歯となりますが、レントゲン等でも判断して修復で温存可能と判断しました。

破折面を適切な部位で切断して、丁寧に作業を進めていきます。

イメージ通りに仕上げていきます。

犬と比較して猫の歯の破折は数的に少ないのが現状と思いますが、犬と違い臼歯ではなく犬歯が多く、90%が露髄を伴います。
その原因は1位が落下事故、2位が吸収病巣です。
高所からの落下はお気を付けください。

腹腔鏡下避妊手術

人医では低侵襲医療として鏡視下手術が普及しておりますが、動物医療でも近年同様の傾向があります。
鏡視下手術とは細い硬性鏡を体内に入れることで、患部を大きく切開することなく小切開で処理をすることで、痛みが軽減され術後の早期回復をもたらし、退院までの期間が短縮され、術創も小さくなることもメリットといえます。
術者側としても、カメラを通じ拡大された視野の中で操作するため、細かい血管の走行を確認しながら作業を進められるために、丁寧な手術を行なうことが出来ます。

先般、15㎏の中型犬の腹腔鏡下避妊手術を行ないました。
通常の開腹手術では中型犬では10cm程度の切開創ができますが、腹腔鏡では各ポート1㎝程度を3か所切開します(第3ポートは摘出する卵巣・子宮のサイズによって開大します)。

このように3つのポートからトロッカーを挿入し、⓵電気デバイス、②硬性鏡、③鉗子を扱い操作します。


カメラ越しに卵巣にカウンタートラクションを掛けながら、処理していきます。


専用の長い電気デバイスを用いて処置します。


青線が通常の開腹手術ラインですが、比較的にコンパクトに済みますので、術後の回復はやはり早いと思います。
鏡視下手術は人医からの派生技術ですが、確かなメリットはありますね。
しかし、避妊手術に限っては当院では全ての動物に腹腔鏡下避妊手術を推奨していません。
体格、並行して他の手術を行なう(大型犬などの予防的胃固定)、オーナー様の考え、先天的基礎疾患の有無(被嚢性腹膜硬化症)などを鑑み判断します。



シアルマリンの購入が可能となりました!

今回、ご紹介するのはシアルマリンという海洋性堆積物の原料を用いたサプリメント製品です。
シアルマリン研究は九州大学の故 白畑教授、現在は富川准教授がその研究を引きついでされている分野です。
シアルマリンは遥か30万年以上前の海・山の堆積物が、発酵と分解を繰り返したもので、ミネラル・アミノ酸などが豊富に含まれ、今わかって研究成果として、
⓵抗腫瘍効果:ガンの増殖抑制、血管新生抑制、アポトーシス誘導、免疫増強、インターロイキン(IL)活性化
②抗アレルギー:ヒスタミン合成抑制や放出抑制、IgEレセプター発現抑制
③抗糖尿病効果:インスリンレセプター活性抑制、血糖値の上昇抑制、
④抗菌性:非共生菌(大腸菌など)への抗菌作用、共生菌(麹菌)への増殖成長作用
⑤腸内環境の改善:善玉菌の増殖、悪玉菌の減少、ガスの吸着や分解
などがあります。
今後のその成果に期待したいですね。
今挙がっている報告例としては、慢性皮膚症、慢性腸症、腫瘍などで用いられケースが主です。
当院での取り扱いが可能となりました。
剤形として、液剤と顆粒タイプがあります。
現在、治験として、1か月間のモニターも行っておりますので、ご興味のある方はご相談ください。





鶏の骨の誤食にご注意を!

鶏のから揚げは美味しいですよね。

しかし、ワンちゃんにそのまま与えると肉だけでなく、骨まで飲み込んでしまいます。

鶏の骨を食べるのは大変危険なんです、ご存じでしょうか??

何故かというと、鶏の骨は割れると鋭利ですので、食道、胃、腸などに損傷を与え、場合によっては穿孔し、腹膜炎を起こし、開胸・開腹手術を行なわなければいけませんし、程度によっては死に至ることもあります。

また、誤食した場合、吐かせる処置をしますと、胃や食道を傷つけてしまいます。

この場合は、麻酔下で内視鏡にて丁寧に摘出するのがベストです。

つい先般も、鶏骨誤食ケースに遭遇しまして、何とか対処いたしました。

(レントゲン画像:胃内に多数の骨が映っております)



(内視鏡下にて摘出)


予想以上に骨以外の食さが多く、骨と食さとの見分けがつきにくい中での作業となりました。また、食べた骨の本数も形状も分からないので、どれくらい取ればよいのか、逐一レントゲンを撮りながらの作業となりました。



(処置後)

何とか、無事に処置を終えて退院となりました。
ワンちゃんを預かった身として無事に帰って頂くと本当にホッとします。
猫ちゃんは鶏の骨の誤食は経験がないのでわからないのですが、兎にも角にも鶏骨はご注意ください。


生薬「Huaier」について

西洋医学のアロパチー(対症医学)に対して、古くからの伝統医学でナチュロパシーがあります。
ナチュロパシーとは本来の体が持ち合させている、恒常性を保とうとする生体反応「振り子でいう元に戻ろうとする作用」を高めようとするものです。
体の自然治癒力を上げるため、栄養療法・東洋医学・ハーブ療法など色々とありますよね。
今回、ご紹介しますのは、このナチュロパシーに分類されるもので、「Huaier」フアイアについてです。
フアイアはキノコの菌糸体の抽出物で、元より中国で癌に対して使用されていました。
2019年にフアイアから糖鎖の一種である「TPG-1」という成分が、細胞の伝達に関与し、抗腫瘍、抗炎症、免疫調整作用を発現されるとの報告がなされました(Journal of Biological Chemistry)。
また、2018年には肝臓がんの術後の無再発生存率がコントロール群と比較して、有意差が認められたと報告されました。
病気は免疫システムの不調が原因で生じます。
⓵免疫が低下する→ガン、感染症
②免疫が暴走する→アレルギー疾患、喘息、腎炎、リュウマチ、膠原病
免疫は低下したり、暴走したりします(混沌)。とどのつまり、免疫は或るところでは低下し、他方では亢進するので、どちらかに偏るだけではないというものです。
フアイアは細胞を安定化させ、これらの異常に満ちた免疫機構を中庸化することで、その作用を発現します。
獣医学領域では、
肝臓がん、乳がん、肺がん、大腸がん、胃がんなどのガン疾患
腎不全
肺炎や喘息などの呼吸器疾患、
アトピーや食物アレルギーなどの皮膚疾患
などに用いられております。
今回、当院でも「Huaier」フアイアを含んだ製品を取り扱いが可能となりましたので、ご興味にある方はご相談ください。

春の健康診断+フィラリア検査始まります!

少しずつ寒さが和らいで来ましたねclover
3月より、春の健康診断とフィラリア検査が始まります!

春の健康診断では…
血液検査:血球検査+生化学検査15項目+電解質+フィラリア検査が
通常13,948円のところ7,370円(税込)で受けていただけますshine
※血液検査では、肝臓・腎臓・膵臓などの臓器の働きや、貧血、高脂血症の有無を知ることが出来ます。
 また感染症や炎症、慢性腸症などを類推することもできます。


検査は全年齢対象ですが、動物は人の何倍ものスピードで歳をとるため、5歳以上の子には特におすすめしております。
血液検査がお得なこの機会に、ぜひ健康診断をご検討くださいdogcat

なお、フィラリア検査のみご希望の場合は2,200円(税込)です。
フィラリアの予防期間は5月~12月ですので、5月までにご来院ください。



猫の食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニアは、横隔膜食道裂孔を通じて腹腔臓器の一部が胸腔側に逸脱することで、呼吸器症状や消化器症状などを呈し、症状の重症度は多岐に亘ります。
ヘルニアの形態により、滑脱裂孔ヘルニア、傍食道裂孔ヘルニア、胃食道重積に区分されます。
今回、ご供覧するのは生後4カ月の猫ちゃんが呼吸困難を起こし、各種検査にて傍食道裂孔ヘルニアと判断した画像です。
手術前レントゲンでは、胃内の造影剤が横隔膜を跨いで食道側にあります。

術後は、胃は腹腔側に戻されております。

それほど、遭遇する病気ではありませんが、無症候性に経過を示すものもありますし、手術が必要な場合もあります。
確定診断はレントゲン/造影レントゲンです。
吐き戻しが昔から多い、すぐに開口呼吸になる場合は、ご相談ください。



膀胱結石

ワンちゃんと猫ちゃんの泌尿器内における結石のトラブルが最近多いように思います。
特に、年間を通じて冬場は飲水量が減るため、泌尿器疾患は増加傾向になります。
つい先般もワンちゃんで膀胱内の結石が尿道に詰まり閉塞してしまう事例が見られました。
ワンちゃんは尿道に沿って陰茎骨があるため、この部位で引っかかるんですね。
下画像では膀胱内に結石を戻したものです(青丸)

以前から、膀胱内に結石があり、食事・サプリメントによる溶解療法を試みておりましたが、一旦尿道内へ下降し閉塞した場合は再発の恐れもあり、手術を行います。

膀胱内に大小様々な結石の集合体。

摘出した膀胱結石の一部。
結石分析結果はシュウ酸カルシウムで、溶解しにくいタイプの結石でした。
ストラバイト結石のように食事やサプリメントで溶解しやすい結石のありますが、こちらの結石は一度形成されると溶かすのが難しいと思います。
私見ですが、同じ食事を食べていても結石を形成しやすい個体とそうではない個体があると考えられます。
そのために、今後は結石が出来ないよう体質に見合った食事を提案できたらと思います。
頑張りましょう!!






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